不妊治療はどうやってスタートすればいいの?

医療

皆さんこんにちは。荒木です。今回は、こちらのコラムについてご紹介したいと思います。

24人に1人は体外受精、顕微授精で産まれている

日本生殖医学会に掲載されている ART データ集によれば、「生殖補助医療」と言われる体外受精・顕微授精による胚移植で生まれた赤ちゃんの人数は年々増え、2013年の最新データによると、24人に1人という割合になっています。

上記のグラフを見てみると、黄緑色の「凍結胚移植」で生まれた赤ちゃんの人数が大きく増えてきていますね。
凍結胚移植とは、体外受精や顕微授精で得た赤ちゃんのもとになる受精卵(胚)を一旦凍結して、後で解凍して戻す方法です。

凍結胚移植は次のような場合に行われます。

  • 1回の採卵でたくさん受精卵を得ることができた場合
  • 採卵後、すぐに戻すより後で戻した方が安全、または妊娠が期待できる場合
  • 妊娠の時期を決めたい場合

など

また、凍結胚移植で生まれる赤ちゃんの数が多い理由としては、次のようなものが挙げられます。

  • 凍結できる段階まで育つことができたものは状態が良いから
  • 卵子の質の良い若い年齢で採卵をし、第2子第3子で使用したケースも含んでいるから
  • 1回の採卵の割合に対し、複数個凍結しその回数分移植ができるから

晩婚化の影響で体外受精や顕微授精の件数が増えていくにつれ、凍結胚移植の件数はさらに増えていくことになるでしょう。一般不妊治療と言われるタイミング療法や人工授精も含めると、不妊治療で生まれた赤ちゃんの数は、24人に1人でなく、もっと多いと思われます。

このように、「生殖補助医療」によって生まれる赤ちゃんの数は増えており、病院で治療をすることは一般的になってきています。それでも「不妊治療施設に行くのは勇気がいる」「病院に行くほどではないかもしれない」と思う方も多いのではないでしょうか。

では、治療施設とは具体的にどのようなことをする場所なのでしょうか。

治療施設って何をするところ?

まず、ホルモンの血液検査や、子宮や卵巣に異常がないか、ご主人の精子に問題がないかなどを調べます。検査で問題が見つかれば治療をしたり、超音波で毎月の卵胞(卵子の入っているふくろ)の成長やホルモン状態を調べて性交渉を持つタイミング療法や、人工授精や生殖補助医療の選択をすることがありますが、特に異常がないか調べるだけでもよいのです。
施設によっては、カウンセリングや相談室、来院者間のグループワークなども充実しており、周りには相談しにくいような性の問題、ご夫婦のパートナーシップについての相談などができる場所でもあります。

大切なのは、前回「晩婚化・高齢化になっても、生物としての妊孕力(妊娠する力)は昔と変わらない」でご紹介したように、「加齢によって妊孕力(にんようりょく:妊娠する力)は落ちていく」ということです。

「不妊治療」というと踏み出しにくいかもしれませんが、必ずしも治療をしないといけない場所ではありません。まずは「将来赤ちゃんがほしい時に妊娠の準備ができている状態をつくる場所」、「赤ちゃんがほしいのにできないことを相談する場所」、とお考えいただき、それでも治療が必要な場合は、最速・最善の状態でお受け頂きたいと考えています。

そして、「知らなかった」「もっと早く来ればよかった」と苦しむ方を減らしたいというのが、私のいちばんの願いです。

※引用・参考資料 日本生殖医学会HP

プロフィール

メンバー 荒木 依理 の写真
Real name: 
荒木 依理
荒木 依理

・不妊症看護認定看護師
・生殖医療コーディネーター
・思春期保健相談士

2008年~   梅ヶ丘産婦人科(東京都世田谷区)在籍
2016年4月~ 関西に移籍

予防医療・性教育学を専門とし「知らなかったをなくしたい」をコンセプトに、女性が自身のリプロダクティブヘルス(性と生殖に関する健康)に目を向け、ワークライフバランスを大切にした幸せな人生を選択できるようサポートすること、日本の少子化対策に貢献することを志としている。
現場での患者様へのケアや相談はもちろん、ライター業務や、学生への性教育、企業や病院での不妊予防・ライフプランニングを主とした講演などの啓発活動を行う。

【執筆】Lealta(レアルタ)http://lealta.jp/author/e.araki/
ラブ&ハピネスをテーマとしたウェブマガジンです。