2017/11/11 up!
ストレスが妊活に与える影響とその対処法
第6回のコラムでは、そもそもストレスって何?ということをお話させていただきました。
今回は、そのストレスが妊活に与える影響とその対処方法についてお話させていただきます。
妊活はストレスか?
妊活や治療を受けているときは、“妊娠したくてもうまくいかない状況”です。自分がなりたいと思っている状態になれないことは、大きなストレスとも言えます。そして月経がくるたびに、繰り返し不安を感じ続けているのです。
また、通院している人は、その時間を確保するための仕事の調整に大変な労力が必要になります。体外受精にステップアップするとなれば、受けたことがない治療への不安や高額な金銭面での負担など様々なストレスにさらされることにもなります。このように、日常的に治療によるストレスを受け続けている訳ですから身体に何らかの影響がでてもおかしくないわけです。その影響を受けやすいところが自律神経系です。
ストレスをうけるとどうなるか?
自律神経系が影響を受けると生体の恒常性が乱れる、つまり自動的にコントロールされていた部分に様々なトラブルが生じます。例えば、動悸、めまい、食欲不振、下痢、便秘、睡眠障害、頭痛、過呼吸、抑うつ状態などなど・・・。
さらに、このような症状を自覚していなくても身体の中では影響を受けている可能性もあります。
以前のコラム「鍼灸で卵巣・子宮の血流を改善しよう!」でご紹介したように、自律神経系の交感神経は血管(動脈)の平滑筋に作用して血管の太さをコントロールしています。ストレスにより交感神経が必要以上に刺激され続けることは血管を収縮させてしまうため、生殖器系の血流を低下させてしまうと考えられます。
このようなことからストレスに対して適切に対処することは心身の健康を保つためにも、そして妊活をより良い状態で頑張るためにもとても重要であることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
鍼灸治療はストレスを軽減する
さて、ストレスが良くないことは言われなくても良く分かっていると思われるかもしれません。そこで、重要なのはストレスに対してどの様に対処していけば良いのか? ということですよね。そこで鍼灸治療の出番です!
まず、鍼治療をうつ病の治療に応用したことで通常の治療よりもうつ病の程度が軽減したという論文をご紹介します。
(Acupuncture and Counselling for Depression in Primary Care : A Randomised Controlled Trial. PLoS Med. 2013;10(9):e1001518. impact factor of 14.429 )
この論文では755名のうつ病の患者様を対象に臨床試験を実施しました。患者様を治療の方法別に3つのグループに分けました。
- 通常治療(抗うつ薬):151名
- 通常治療+カウンセリング:302名
- 通常治療+鍼治療:302名
全ての治療方法においてうつ病は軽減しましたが、その中で一番軽減した方法が(3)の通常治療+鍼治療 のグループだったのです。
また私たちの臨床研究でも、鍼灸治療によって不妊治療中の患者様の抑うつ状態が有意に軽減している結果も得られています。 2010〜2011年の間に不妊治療のために鍼灸治療を行った321名にEPDSという産後うつ病の調査票を用いて抑うつ状態を調査しました。この調査表は30点満点中9点以上だと産後うつの傾向があると評価できる調査方法で、産後ではなくても抑うつ状態を評価する方法として応用されています。
結果ですが、鍼灸治療の初診時に9点以上だった高得点者(平均11.9点)が鍼灸治療3ヶ月後には9点を下回る結果(平均7.8点)にまで減少したのです。
このことからも鍼灸治療を継続的に行うことでストレスによる症状を軽減できることが伺えます。
鍼灸治療は「鍼灸で卵巣・子宮の血流を改善しよう!その2」ご説明したように、自律神経系を整えることで血流を改善する効果が期待できますし、今回のお話のようにストレスによるメンタルの不調にも効果が期待できることがお分かりいただけたでしょうか。
さて次回は、自分でできるストレス解消法をお話したいと思います。